『睦月、お前の新しいお父さんとお母さんだ。』
 呆然とする。
『睦月ちゃん、これからよろしくねェ。』
 不気味な笑顔。
『しーちゃんは、しーちゃんはどこ?』
 どこにも居ない。
『睦月、これからはこの人たちの言うことを良く聞くんだよ。』
 しーちゃんは?……しーちゃんは?…………しーちゃんは!!!

 僕がいない間に、一大事が起こっていたらしい。
 文月は霜月が、幼かった頃から大切にしていた犬だ。
 その文月が亡くなったのだから、霜月にとって大事だ。従って、それは僕にとっても大事である。
「むーちゃんが家を出た後に、ふーちゃんの様子がおかしくなったの!」
 霜月は言う。
 その後、卯月が文月の様子を見ていたらしい。彼女は動物の生態に詳しいからな。
「卯月じゃなくて、お母さんだよっ♪」
 突っ込む余裕が出てきたらしい。良かった。
 水無月と斑鳩も、テーブルについて聞いている。水無月も、文月のことは可愛がってたらしい。
 いつもは水無月は、この時間帯には部屋に篭ってるのに。
 文月の傍に霜月と、その付き合いで斑鳩がおり、様子を見ていたそうだ。
 そして亡くなった、らしい。
「それは……かわいそうなことをしたよ。俺、ここんところ全然文月を見る余裕が無かったから……。」
 悲しげな表情の水無月は珍しい。
 斑鳩が無口だ。それも珍しい。
「お葬式、するのかな……行きたいけど……」
 霜月の表情が曇った。
「……お母さんがもっていっちゃったから、どうするんだろうな……。」
 実験台になっていないことを切に祈るよ。
「縁起でもないこと言わないでよっ!」
 ……怒られた。

 その翌朝に、珍しく一緒のテーブルについていた卯月に霜月が必死に聞いていたところによると、文月は丁重に、火葬するらしい。僕たちが学校から帰ってきたころにはお骨になっているということだ。
 学校に行き帰ってきた僕らは、家の扉を開いた。
「ただいま。」
 斑鳩と声を揃えて言った。
 すると、居間から飛び出てきて、霜月が僕に抱きついてきた。
「ど、どうしたんですか?」
 斑鳩が後ろで驚いている。
 耳元で微かに声が聞こえた。

「ふーちゃんは、殺されたんだよ……。」

僕らの、不倶戴天の敵が、明確に現れた瞬間だった。