「睦月さん!もう放課後ですよ!」
「え?」
 いつの間にか熟睡していたようだ。
 今日の授業も全部聞かなかったな。
 というか、いつもなら食べる弁当でさえ食べていない。
「やばい……折角霜月に作ってもらった弁当……食べてない……」
 恐る恐る、机の横に掛けておいた鞄の中にある弁当を出し、蓋を取り中身の無事を確認する。
 良かった、まだ腐ってはいない。
「え……睦月さん、まだご飯食べていないんですか?」
 同じクラスのはずなのに僕がずっと寝ていたことに気付かなかったようだ。
 というか、いつもなら斑鳩に昼休みに起こしてもらうのだが(というか昼休みに僕の席に遊びに来ると言うべきか)、今日は来なかったようだ。委員会でもあったのだろうか。
「うん、ずっと寝てた」
「勉強しに学校に来たんじゃないんですか!?」
 心底心配だと言わんばかりの斑鳩の表情。
「寝に来た」
「…………」
 呆れ顔の斑鳩。
 まあ、呆れる気持ちは、分からないでもない。
「睦月さん、昨日何時に寝たんです?」と、厳しい声色で、僕に問う。
「……言ったら絶対に怒ると思うけど、焦らしてもどうにもならないだろうから言うよ。今朝四時までネットゲームしてて、その後にシャワー浴びて、寝たから、五時くらい?」
「…………!」
 ほら怒った。
 斑鳩の場合怒っていない時はかなり饒舌なのだが、反面、怒っているときは口数が少なくなる。
「……睦月さん」
「何?」
「今日から貴方を管理します。風紀委員の名に賭けて」
 それはお前の名前じゃないだろう。
 心の中で突っ込む。
「いいけど、そんなことしたら霜月が黙っちゃいないと思うよ?」
「いざとなったら直談判しますよ」
 うわこれはまずい。
 こういう危機的状況になって初めて思い出したこと、それは。
 霜月も僕には早く寝ろと言っていた、ということ。
 しかもあのいつもは笑顔の霜月が、朝、怒っていた、ということ。
 これはもしかしたら、霜月もこの風紀委員斑鳩のしようとしている行為を許してしまうかもしれない。
 斑鳩が僕らの部屋に泊まるという、その行為を。