独旅(ひとりたび)さん――独旅或亜(ありあ)は、ボクのクラスの中央委員(小学校でいう、学級委員長だね)で、お兄さんが一人いる。
 名前は「詠(えい)」というらしい。
 そういえば、セイと独旅さんの。
「笑顔」がそっくり。
 なんだよね。
 そーいえばうちの学校って私服なんだよね。
 今日の独旅さんの服装は…?
 ふ~む……フード(帽子)がついている長袖のシャツ…?の上にベストを着てるようだ。
 下はスカート。
 髪はサラサラなロングヘア―(ここまではアイと同じ)で、ヘアバンドをしている。
 アケミ、は。
 いつものように、リボンを結っている。
 今日はポニーテールか。

「おはよー。美朋。」
とアケミが言う。
「おはよーございますなのですの。美朋ちゃん。」
 アイが言う。
「ちっす。美朋。」
 これはマリ。
「おはよう、ミホちゃん。」
と、独旅さん。
 みんな、とりあえず挨拶を交わす。
「ところでぇ、美朋ちゃん、その人誰?」
と、アイが言う。
 そういえば、紹介するの忘れてた。
「この子は、セイ。ボクのイトコ。」
とボクが言うと、
「上杉星です。ドイツからきたんだけど、よろしく。」
とセイが言った。
 もちろん、変な発音で。
 まだ慣れていないみたい。
「ね、セイくん。どっからきたの?」
と、アケミの質問。
「え、と、ドイツから来たんだけど、よろしく。」
と、少し発音が良くなってセイが言う。
「違う違う☆ね、ドイツのどこから来たの?」
とまたまたアケミが問う。
「ん、と、ミュンヘン。」
と、セイがさらに発音を良くして、答える。
「とにもかくにも、よろしく。」
 セイがそう言って、締めくくった。
「へぇ、ミュンヘンねぇ…。」
と、マリの疑っているような声。
「まぁ、ミュンヘンでもルンペンでもどっちだっていいじゃん。」
と、ボクが大声で言うと、
「……ミホちゃん、言ってて恥かしくない?」
と、独旅さんが小声で言った。
「なんで?どぉしてぇ?」
 よくわからない質問されたから、逆にボクが問うてしまった。
「だってさぁ……、よく考えてみてよぉ……ルンペン……の意味。」
と、アケミ。
 ルンペンって確か。
 ドイツ語で確か。
 lumpen
って書くんだよね…。
 意味は確か……浮浪者。
 の意味は……。

 ボクの顔が赤くなった。
「セイ君は知ってるよね?」
と、アケミ。
「おれは知らない。第一、ミュンヘンも知らないし。」
と、マリがそっぽを向く。
「マリリンには訊いてないのぉ。セイ君に訊いてるのぉ。」
と、アケミがふくれている。
「ルパンって、怪盗ルパンっていう、古…うぐっ…」
 セイが『古い』と言い掛けた時、ボクはセイの口を塞いだ。
 今ではそんなに古くないからだ。
『怪盗ルパン』は。
(あ、なるほど。それで口をふさいでいるんだ。)
と、セイの声。
 え?
 なるほどって?
 何が?
(ごめん、美朋の心、覗いちゃった。ごめん。実はね、ESPを。)
 使ったんだね。
(そうなんだ。けど、本当にごめん。傷ついてしまったなら。)
 別に傷ついてなんて……。
(よかったー。……それよりも、口、塞ぐのやめて……)
 はっ、と思って、ボクは手を放した。
「ちがうよぉ、セイくん。『ルパン』じゃなくて…『ルンペン』…だよぉ。あ、バスだぁっ☆」
 ブルルルルッ。
 という、バスのエンジンの音。
 実はいうと、さっきから何度も来ていたのだった…。
 ボク達は話していたから気付かなかったのだった…。
「……アケミちゃんたち……」
と、独旅さんが呆れて言う。
「これで4台目なんですけど。」
「ひぇぇぇっ。4台っ。」
 ボク達はあわててバスに飛び乗った。
 ボクは腕の時計を見た。
 8時12分……!!
 だめだぁ、完璧に遅刻ぅ~。
「ところでぇ、アリアちゃん、どぉして一人で乗っていかなかったのですの?」
と、アイが訊く。
「これがバスかぁ。」
とセイは喜んでいる。
「寂しいもの。」
と、独旅さんが答えた。
「ところでぇ、セイくん。『ルンペン』の意味答えてみてよぉ☆」
と、アケミがしつこく問う。
 椅子に座りながら。
「次は、明戸(アキド)公園前です。」
 バスの放送が、ボク達の間を流れた。
「ねぇ、早く早く☆」
と、アケミが急かす。
「え、ここ、すごくいいところだね。」
と、明戸公園のデカい原っぱを見ながらセイが言う。
「ちがうってばぁ!」
 アケミは、半分怒って言った。
「は、はいはいはいはい。『ルンペン』でしょ。仕事がない人のことでしょ。これでいいでしょ。」
 セイが、やっと答えた。
 ちょっとアケミにおされたような感じだけど。
「次はセント・アポイント・病院前です。」
 放送が流れた。
 後、もう少しだ。
 時間は……?
 8時15分。
 もう、所詮は遅刻。
 わかってんだから、あわてない、あわてない。
 1名慌ててる。
「あーん。どーしましょ、どーしましょっ。きゃー!美朋ちゃん、どーしましょっ!」
 アイが慌てている。
 すごい慌て様。
「そんなこと言われたって……ねぇ、セイ?」
 ボクは慌ててセイにバトンタッチした。
「え、あ、うん。」
 セイは景色を眺めてる。
 椅子に座りながら――。