ボクは時計を見た。
 9時過ぎだった。
「あ――――っ!!お風呂沸かすの忘れてたっ!!」
 大声で叫んでしまった。
「姉ちゃーん。とっくのとうにシャワー浴びたからー。」
と、朋雷の声。
 一瞬、ホッとした。
「セイ、もうそろそろ中に入った方がいいんじゃないかな。」
「うん。そうする。それに、シャワーっていうのも見てみたいしね。」
 どうやら、辞書にシャワーのイラストは載っていなかったらしい。
「じゃ。先に浴びてて、セイ。」

「セイ、もしかして、ここで寝るつもり?」
「うん」
 セイがきっぱりと言った。
「普通、男と女は別々に寝るんだよ!…しかたない。今日は特別だよ。明日からは朋雷の部屋で寝てね。」
 ボクは半分怒って言った。

 ボクの着ているパジャマは、上はくまのプーさんの絵が描いてある。
 下は全体的に黄緑色。
 一方、セイのパジャマは、水色に白い水玉模様が入っている。
 ボクにとっては長いから、ボクが着る時はズボンの裾を折り曲げている。
 しかし、セイにはぴったりだった。
 少しぶかぶかだけど。
 つまり、セイは、足が細長いわけなんだ。
 ふうん、初めて知った。
 ボクのパジャマは、これと、それと、赤と白のギンガムチェックのしかない。
 なんてったって、パパやママから送られてくるお金は月4万円。
 1日1200円を使うとすれば…。
 ああっ!!
 お金のこと考えると頭が痛くなるっ!!
 こんなことを考えるのは、やめよう。
 それでそのパジャマ(セイの着てるやつ)について、もっとくわしく言うと。
 ボクが着てるのと同じ、半そで。
 肩の辺りから裾の辺りまで(つまり袖。)が、全部水色(ボクのはそこが黄緑のチェック)。
 で。
 それで。
 結構、似合う。

 セイは、ボクが寝てるベッドのすぐ横で、布団を敷いて、寝てる。
 おやすみ、セイ。

 そういえば。
 セイの寝顔が。
 何となくうちのクラスの。
 誰かに似てる。
 気がする。
 ま、いいか。
 明日の朝、セイに聞けばいい。
 セイのご先祖様を。

 ボクは。
 いつの間にか寝てしまっていた。
 そして、夢を見た。
 クラスの委員長が。
 出てくる夢。
 笑顔の委員長が。
 そういえば。
 委員長とセイ。
 顔がなんとなく似てる…。
 まさか委員長さんが!
 セイの先祖だったりして。
 のわけ、ないよ…ね…。
 

「おはようっ!」
 セイが変な発音で言う。
「…お゛は゛よ゛――…」
 ボクはグッタリとした声で言った。
 あの夢を見た後、すぐ目が覚めちゃって(しかも3時過ぎ…)、寝られなかったからだ。
「ああっ!」
 セイが叫ぶ。
「やめてよ。耳に響くから…。で、どうしたの?」
 また、グッタリした声で言った。
「美朋の目が四つある!」

 ボクは、急いで洗面所に行き、顔を洗って、タオルで拭いてから、鏡に映っている自分の顔を見てみた。
 ホント、目が四つあるみたい。
 でも、目の下にクマがあるだけなんだけどね。
 ふあああ――っ(あくび)。
 ねむいな…。
「美朋~~~~っ。ゴハンっ。」
と、セイの変な発音の声。
「姉ちゃんノロマッ!」 今知った…ノロマって「鈍間」って書くのね(^^;
と、これは例のごとく、朋雷の声。
「一言ヨケイなんだからっ。朋雷はっ。」
と、キンキンする、ボクの大きな叫び声。
「えーと…。何か、言った方がイイかな?」
と、これはセイの独り言。
 そんなに一生懸命になんなくてもいいのに…。

 ボクは、部屋に戻り、クローゼットの中からTシャツと下着とキュロットを引っ張り出し、パジャマをぬぎ、そして下着を着た。
 その後、なぜかドアが少し開いた。
「誰?」
と聞くと、バッと思いっきりドアが開かれた。
 セイだった。
「ぎゃ―っ!エッチ!スケベ!変態っ!!」
 ボクは大声で叫び、布団の中にうずくまった。
 沈黙。
 布団の中から顔を出して、ドアの方を見た。
 セイが硬直していた。
 セイ……。
 情けないよ……。
「セイっ。早くドア閉めてっ!」
 ボクが怒鳴ると、セイははっとたように驚き、ドアを閉めた。
 …一体何の用で入ろうとしたんだろ…。
 でも、やっと安心できた。
 ふう。
「さあ、着替えよっ…とっ。」
 今、フッと疑問がよぎった。
 セイの着替えはどうするんだろう?
 ま、いっか。
 未来からとってくるだろうし。
 とボクは鷹をくくった。
 きっとパジャマは、夜だったから取りに行けなかったんだろう。

 キュロットとTシャツを着たボクは、居間に戻った。
 テーブルのはじには、セイに着せたパジャマが置いてある。
 そして、セイは、もう着替えた後だった。

 ボクの予想通りだった。
 セイによると、ボクの心の中をかってにESP(超能力を英語で言ったやつの、頭文字を合わせてそう言うらしい)を使って、覗きこんだ(テレパシーね。)だけらしい。
 なんか隠し事とかセイに出来ないっポイ…。

 朝飯朝飯。
 壁の上方についている時計を見てみると。
 7時12分。
 時間がちょっと少なくなっちゃったから、パンと牛乳にしよう。

「ごちそうさま。」
と、セイと朋雷とボク。
 今度はテレビの時計を見てみる。
 7時31分。
 急がなきゃ。
 ここから学校までは約10分かかるし。
 陸上部の大会まで近づいてるし。
 あ、練習サボろっかな。
『腹痛』とか『頭痛』とか『気持ちワルかった』とか言ってサボろっと。
 ホントの理由は『寝坊した』んだけどね。
 あ、とにもかくにも、歯を磨かなきゃ。
 あっ。
 セイの歯ブラシも出さなきゃ。

「こう?」
とセイが歯ブラシを構える。
「違う違う。ところで、セイは右利き?左利き?」
「左利き。」
「あ、じゃ、こうでいいんだ、ごめん。」
と、歯ブラシを左手に持たせる。
「なんだ、昔も今も持ち方は変わらないのか。」
 セイが呟く。
「そんなのん気なこと言ってないで、さっさと歯を磨け。」
 ボクは、とっくのとうに磨いておいた。
 だから、こんなことが言えるのだ。
 腕の時計を見てみると。
 7時35分。
 登校は8時まで。
 ほっ(溜め息)。
 間に合う。

「いってきまーす。」
と言っても、うちには誰もいないけど(朋雷は先に行っちゃったし)

「おはよっ。」
と、みんなに向かって手を振る。
 ベンチには4人の友達―――マリ、アイ、独旅さん、そしてアケミがいた。

 マリ、アイ、独旅さんについて少し説明するね。
 マリ――こと月代万里(さかやき まり)は、ボクよりも、いや、どんな女の子よりも、男っぽい。
 かっこいい。
 で、ボクのクラスの人で、ボクの親友の一人。
 肩から背の中間辺りまで伸びている髪を頭の下の方で結んでいる。

 アイ――日花(くさはな…って読むかなぁ?(^^;)相は、アケミと同じくらい可愛い。
 実はアイは、アケミと独旅さんのイトコなのだ。
 つまり、独旅さんはアケミにとって。
 イトコのイトコってことだ。
 で、アイは、サラサラなロングヘアだ。
 そこが、チャームポイント…かな。
 今日のアイの服といえば。
 ひらひらの。
 ドレスみたいなやつで。
 もちろん、ボクには到底似合いそうもないやつ(だと思う)。
 そして喋り方がですます調だ。