「えっ!?」
「……そうすれば……少しは……回復するから……」
「わ……わかった。」
 オレはキャロの言った通りにサックスを吹くため、ケースから楽器などを取り出した。
 そしてセットする。
 カチャカチャと音を立てながら。
 今、コンクールのために吹いている曲を吹こうか、それとも昨年度のソロコンテストの時に吹いた曲を吹くべきか。
「何でも……いい……翔の好きな……曲で……」
 んじゃ、ソロの曲で。
 ♪~~♪~~♪~~
 二回の廊下にオレの吹く音が響いていく。
 キャロの体が回復していくことがオレにもわかった。
 彼女の体が煌きらめく。
 気のせいか、少し大きくなったように感じられた。
 何って、キャロの背が。
「ありがとう、翔。生き返ったよ。」
 オレに微笑みかけながら、彼女が言った。
「ん……こんなんで良ければいつでもやるよ。」
 とにかくキャロが元気になって良かった。
 さて、“月の陰”を見つけ出さなくては。
「キャロ、どこから“月の陰”の気配がする?」
 キャロは静かに目を閉じる。
「……下だわ。あの、何故か気配をほとんど感じ取れなかった場所……和室の周辺から……」
 えっ!?
 力を消していた、ということか!?
「たぶん、さっき翔が吹いた音のプラスエネルギーのせいで、抑えていた力が溢れ出てしまったんだよ。」
 なるほど、納得。
「つまりキャロと同じ、音の力の影響を受け易いやつってわけだな、“月の陰”は。」
 一瞬、キャロがあわてた表情をしたのは、気のせいだったろうか。