あの後スペクトはクラウドと共に消えてしまった。
 それとほぼ時を同じくして、皆を襲っていた蝙蝠たちも消え去っていた。
 人々は落ち着きを取り戻したが、クラウドの姿が無くなったことに気付いて再び大騒ぎになってしまった。
 今朝の「リムージュタイムズ」によるとまだクラウドの居場所と誘拐犯がわかっていないらしい。
 あの後事情聴取をその場にいた全員が受けたが、私の発言にはあまりにも現実味が無かったらしくクロージュポリスの人達は信用してくれなかったようだ。
 吸血人はいないものとされているから仕方がないものの、やはり空しさの感は否めない。
「こうなったらボクたちでクラウドを見つけようよ!」
と最初に言ってくれたのはシリアだった。
 真っ青な顔をした私を励ますためだろう。
 ポリスの人達が私の言を信じてくれないのであれば自分たちで動くしか他にクラウドを助ける手段はない。
 アルマにも協力してもらい、スペクトの居場所を探すことにした。
 といっても吸血人は不可解なことだらけで(何度も言うが居ないものとされているため)、とりあえず私たちは最後に発見された…退治された吸血人について調べるためにリムージュライブラリーへと赴くことにした。

「よーし、張り切って探そっ☆」
というアルマの張り切り声で吸血人の資料探しが始まってから僅か5分後。
 最近は月の精や月読(つくよみびと)たちの力によって発達した“探月鏡”を用いてライブラリーにあるものを検索することが出来るようになっていたことにまず驚いた。
 以前までは自らの力か、魔力を少し消耗することでしか本を見つけることが出来なかったのだが、その“探月鏡”を用いると欲しい資料を念じるだけでどこにあるのかを表面に映し出してくれるのだ。
 リムージュ、田舎町だと思っていたんだけれど…。
 そんなわけで、張り切るまでもなく見つけることが出来た吸血人に関する資料がこの3冊。
 そのものずばり『吸血人』、『リモライト族と闇の一族たち』(リモライトというのはリムージュを支配している一族である)、そして『明解ユピータス地図』。
 私たちはそれぞれ1冊ずつ担当し、史上最後に発見された吸血人に関する内容を探した。
「アルマは本読むの得意だから、絵の少ない『リモライト族』の方、逆にシリアはリムージュ語に慣れてないから『地図』、そして私は『吸血人』担当ね。」
「「了解っ!」」
 シリアとアルマの声が重なった。

 私の担当した本『吸血人』には、“リムージュ”の周りや“リムージュ”で起こった吸血人に関する事件についての記事、そして吸血人の由来などが掲載されていた。
 時々出てくる古代リムージュ語が私を混乱させたが、アルマに質問することでなんとか読むことが出来た。
 吸血人は、リモライト族のような月読人から派生して生まれたそうだ。
 だから月の満ち欠けに敏感なのだそうだ。
 満月を選んだのにも納得いく。
 月読人にとって満月は一番力をみなぎらせてくれるものだ。
 それと同様に吸血人にも。
 つまり満月に近づくほど力が強くなってしまうわけだから……早く退治しないとどうしようもないことになってしまう!
 急がなきゃ、いけない。
 クラウドのためにも……!
「フィラ、見つかったよ~☆」
 速い、さすがアルマ。
「どれどれ?」
「えっとねぇ、吸血人は“リムロード”の裏にある“デダロード”を本拠地にしてたらしいよんv」
「「え、“デダロード”!?」」
 今度は私とシリアの声が重なってしまった。
 “デダロード”は魔物や妖怪が多く出現する森(山)だから、私は近づかないようにしていたのだが……。
「そ、そんなところに行ったらフィラが襲われまくっちゃうよ!」
「フィラに格好いいとこ見せるチャンスじゃない♪」
 アルマの謎の意見。
「う……でもっ、」
「それに“たまご”のちからを磨く良い機会じゃない♪」
「そうだね。それに、そうでもしないとクラウドが助からないしね。」
 肯定の意見を述べる私。
「決まりだねっv」
 ウインクするアルマ。

 “デダロード”の周りには、魔法人たちの張った強力な結界があるので、中にいる魔物たちは外には出られないのだ。
 しかし結界は長い間張り続けていると穴が出来、そこから魔物たちが外に出て行ってしまうことがある。
 それがルーディなのだ。
 穴から出てしまった者。
 早く修理してくれないものか……。
「“デダロード”に着いたね。凄い妖気を感じるよ……それに、結界の跡がある。」
 シリアが言う。
 うっすらと見える、光の筋。
「……ホントだ。」
 妖気と聞いて鳥肌が立ってしまう。
「あ、ほら、なんかあの山のてっぺんに立派な城が見えるよっ!」
 アルマの言うとおりに山頂を見上げてみると、いかにも「吸血人が住んでます」的な城が建っていた。
 恐ろしい……。
「さ、さあ、張り切って行こうよ!」
 シリアが励ますように言う。
 結界の跡を踏み出そうとシリアがその中に足を入れた。

 バチッ