丁度その時、アリマがウィンドに乗って帰ってきた。
「到着☆ウィンドねぇ、“鳥の楽園”で沢山友達できたって♪」
 ……なんか、救われた気がした。
「よかったね、ウィンド。」
 ウィンドが得意げに一声上げる。
「じゃ、そろそろ時間になるから、行こう。」
 にこ、とシリアに微笑む。
「ちぇ……フィラのけち。……まぁ、行くけどさ。」
 すねてる……。

 ウィンドの超高速移動のお陰で、あっと言う間にクロージュのクラウドの城に着いてしまった。
 ……途中で吹き飛ばされそうになったけど。
 クラウドの城から賑やかな声が聞こえてくる。
 すでに他のお客さんたちが来ていたようだ。

 外を見ると、太陽の光が消えかかっていた。
 もうすぐパーティの始まる“日の沈む刻”となる。
 中に入ると、いろいろなお客さんがいた。
 うちの学校の後輩、あ、先輩も。
 クラウドに似た容姿の人もいる。
 クラウド族かな。
 ……うは、怪しげな恰好!
 黒いマント、“水光”に照らされて美しく輝く長い金髪、そして黒目がちな目。
 まるで『吸血人』のようだ。 
 ……いや、まさか。
 吸血人は1000年以上も前に全員封印された(って歴史で出てきた。)はずだし、こんな明るいところで生きていられるはずがない。
 ……それにしても、赤やピンク、青などの華やかなドレスや、背広を着た人々が歩いている中だとかなり目立つ恰好だな。
 そういう私は普段着だけど。
 あ、シリアとアルマもだね。
 そんなことを思いながら、じっとその怪しい人を見ている私。
 ゆったりとした足取りで会場を歩く吸血人(とおぼしき人)。
 あ、こっちに来たっ!?
 その時、運の悪いことにその人と目が合ってしまった。
 しまった、と思うか思わないかのうちに目を反らす。
 ちょっとしてから、視線を元に戻した。
「……あれ?」
 その人の姿はなかった。
 別の場所に移動してしまったのかと思い辺りを見回してみたが、それらしい姿が見つからない。
 まぁ、いいか。
 別の部屋に行ってしまったのかもしれないし、もうすぐパーティが始まるしね。

 私たちが着席してしばらく話していると、これからナッツ・クラウドのバースデイ・パーティを開催いたします、という司会の言葉が騒がしかったこの会場を静めた。
「まず初めに、ナッツ・クラウドから挨拶を……」
 司会の隣に控えていた魔法人らしき人物が、“氷(こおり)光”に照らされたクラウドに向かって「拡音!」と唱え、司会には「解除!」と唱えた。
 クラウドの声が会場に響く。
「本日はどうも、遠く地上からいらっしゃって下さって、ありがとうございます。」
 その時だった。
 パーティ会場は黒い物に覆われたのである。
「きゃーっ!」「何でこんなところに!」悲鳴とその黒い物の鳴き声(キィィーッ!)によって会場が一気に騒がしくなる。
 蝙蝠(こうもり)だ。
 ふと我に返ってクラウドが先程まで立っていた舞台を見やると、そこには『吸血人』にそっくりな人――黄金の髪、黒目がちな目、黒いマントの人――が居たのである。
 一体、どうやって?
 シリアは魔法で蝙蝠を追い払い、アルマは風で薙ぎ倒している。
 そんな中、私一人だけが、舞台を見ていた。
 みんなが蝙蝠に恐怖している中、私は――『吸血人』である彼に、恐怖していたのだ。
 これから起こるであろう出来事を予測しながら。
 クラウドは突然現れた『吸血人』に少し驚いていた。
 私は『吸血人』に動きを封じられ、クラウドの側に行くことも、話すことも出来ない。
 周囲の人々はそれには一切気付いていないようだ。
 蝙蝠を用いて人々を混乱させる……うん、最高だ。
 さすが最高にして最悪の一族。
 そして最悪の口が少し動くと、戸惑っていたクラウドは力が抜けたように倒れた。
 いや、倒れる前に『吸血人』に支えてもらっていた。
 また口が動く。
 いや、動いていない
「私はジータ・スペクト。君の予想通り、私は『吸血人』だよ。君には悪いがこの子は私の大事な犠牲となってもらうことになった。満月の夜――そう、丁度9日後――今日を含めて10日目に、儀式を行う。そして『吸血人』を復活させるのだよ。フフ……10日目が実に待ち遠しいな。はははははっ!」