今日はあのお方――ナッツ・クラウドの誕生日。
 彼の家で、パーティが行われるのだ。
 そして私は、そのパーティに呼ばれたの。
 なんてラッキーなんだろ、私って。

 私――フィラ・ティモールは、14歳
 だけど、私の一族――ティモール族は、成人の儀式として“たまご”を守り、使いこなせるようになるまで、一人暮しをしなければならないので、家族と離れて生活している。
 儀式なんかやだって抵抗したけど、
「儀式を行わないと成人の証をもらえないぞ。」
と言われたので、仕方なく儀式を行うことにしたの。
 成人の証――額に自分の石を持ちたいから。
 それだけの理由なんだけどね。

 で、その見届け役こと保護者役に式神のシリア・パテオ・ローランがいるわけ。
 シリアとは長い付き合いなんだ。
 私が5歳になったときに彼を呼び出したの。
 なぜかティモール族は妖怪に襲われやすいらしくて、そんでそれらから身を守るために式神を呼び出す。
 式神っていっても、私にとっては他の人と大して変わらないように思えるけどね。

 よし、服の準備はできた。
「フィラ―――!!」
「うわっ!?」
 いきなりシリアが現れたので、私は驚きの声を上げてしまった。
「あ、ごめん!驚いた?」
「驚くに決まってるよ!で、何の用?」
「ほら、フィラ、かばん忘れちゃだめだよぉ。この中に大事なものいっぱい入ってるんだから。」
 あ、忘れてた!
 一番重要なものを…。
「財布、プレゼント、“たまご”、招待状…OK!ありがとう、シリア。」
「どいたしまして。くれぐれも“たまご”をとられないように、気をつけるんだよ。」
「わかってるよ。」
 ぶっきらぼうにシリアに向かって私は言い、家を出て、ドアの鍵を閉めた。


 周りの景色がいつもと違う風に思える。
 いつもと同じように家はあり、森は緑色から赤や黄に染まろうとしているのに。
 これはやはり、今日が特別な日だからかな。
「フィラは今日は水色だね。」
「え、何が?」
「オーラが…嬉しそう。」
 シリアにはオーラの色を見る力があるらしい。
 …嬉しさがオーラにも出てるってことかな。
「そっかぁ…」
 オーラの色が変わるから、周りの風景もいつもと違って感じてしまうのかな。

 私の住んでいる町――“リムージュ”の近くに、すっかり橙色に染まってしまった“リムロード”という山がある。
 そこに、私の友達の妖精――アルマ・パムーが住んでいる家がある。
 今、私たちはそこに向かっている。
「…そんなにいいのか…」
「ん?何が?」
 突然シリアが言ったので驚きながらも、私は彼にそう問うた。
「んー…何でもないっ!」
「じらすな!ちゃんと言ってよ。」
「…クラウド、が!」
 クラウド?
「何故急にクラウドを出す?」
「だーかーらっ、フィラがそんなに喜んでるからっ!」
 周りの木々が笑うように葉を踊らせた。
 今日は風が強い。
「それって嫉妬?」
 くす、といやみっぽく笑ってみる。
「そーじゃなくってっ!」
 シリアが怒り出す。
 可愛いなぁ。
 思わず顔をほころばせてしまう。
 するとシリアは突然鋭い表情になった。
「危ない!」
「え?」
 私はシリアに体を伏せさせられた。
 そして頭の真上で
「バリ…」
という音がした。
「ち、逃げられた。」
「な、何をするの、いきなり…」
 すると、今まで何かが逃げていった方向を見ていたシリアは、くるりと顔を私に向けた。
「コウモリがフィラ目掛けて飛んできたんだよ。」
 え?
 こうもり?
「あのコウモリ、妖怪だったよな…吸血鬼とか…そこら辺の…」
「え?なんで?」
 シリアの目が鋭くなった。
「フィラはただでさえ妖怪に狙われやすい体質なのに、“たまご”なんてもってたら…なおさらだ。“たまご”にはありあまるほどの魔力があるからな。」
「そっか…あ、もう少しでアルマの家に着くよ。」
 とりあえず気を取りなおす。

 確かに私も「妖怪に狙われやすい」のはイヤだよ。
 でも、そうじゃなかったら式神を呼ばなかっただろうし、シリアに会うこともなかったと思う。
 だから、ちょっとだけこの体質に感謝している。