たまごのちから

1日目~悪夢の夜~ -その2

 カランコローン、カランコローン。
 アルマの家のベルを鳴らす。
「はーい。」
という、風の妖精特有の鈴の音のような声での返事が返ってきた。
 きらきら光る銀色の扉が開く。
「あ、フィラ。ちゃっすv」
 にこにこ笑顔で無邪気なアルマが、開いた扉の隙間からひょこっと顔を出す。
「ちゃっす。準備出来てる?」
「もっちろんだよぉvフィラのことだからより早くクラウドくんの家に行きたがると思っていつもより早目に用意しといたんだv」
 風の妖精なだけあって、アルマは行動が疾風(はやて)のように速い。
「ハハ、いらないこと聞いちゃったね。じゃあ、1秒でも早くクラウドんちに着く為にも速く歩こう。」
「そうするよりも私のペットのウィンドに乗っていった方が速いよ?」
 ウィンドはアルマのペットで、高速で飛べる「飛翔鳥(ひしょうちょう)」という種族の鳥だ。
「ウィンドくんっていいよねぇ。どこかの本で見た“ツバメ”とかいう異界の鳥より大きくて速いし、人も乗れるし、その上優しい緑色をしていて…」
「式神のシリアが乗るのを楽しみにしてどうする。」
 シリアに対してつっこみを入れてみる。
 式神は空を飛べるから、わざわざ鳥に乗る必要も無いのだ。
「好きなものには変わり無いでしょう。いいじゃんかぁ。好きなものの利点を述べ立てるくらい~。」
 シリアがすねる。
 すると、
「まぁ、ここは抑えて、早くクラウドくんちに急ぎましょ。」
とアルマが私達を制すように言った。
「そうだね。」
 シリアと声をそろえて言った。

 クラウドは飛翔人(ひしょうびと)“クラウド族”のヒーロー。
 フルネームはナッツ・クラウド。
 飛翔人なのでを持つ。
 綺麗で、清々しい色のそれを持つクラウドは天使と見紛うほどの美しさも持つ。
 そして飛翔人は空に浮かぶ島“クロージュ”に住む。
 そこに行くためにはここ“リムロード”にある“飛翔場”で飛翔鳥を借りるか、持っているのならその飛翔鳥を普通の人は使わなければならない。
 今回の場合は飛翔鳥であるウィンドに乗っていくので飛翔場に寄る必要はないのだ。
 というわけで、真っ直ぐクラウドの家(クラウドはクラウド族の長の息子なのでお城に住んでいる!)に向かう。
 地上から上に行くほど寒くなってくる。
「どんどん寒くなってきた…みんな平気なの?」
と、弱音を吐いてしまう私。
 ちなみにクロージュは高度500m地点に浮かんでいる。
 今は200mかそこら。
「ボク式神だし。」
「私風の妖精だしね。一応。」
 私は普通の魔法人…
 そうだ、魔法で暖かくすれば良かったのか。
「あ、もうすぐ着くよ。」
 アルマが知らせてくれる。
 ご丁寧に…。
 魔法結局使えなかった…
 まぁ、ウィンドに乗ってるわけだからすぐに着くのは当然なんだろうけど。
(ちなみにアルマとシリアは空を飛べることは飛べるが、500mも飛ぶ浮力はないのだ。シリアは上に上がるまでウィンドに乗っていなかったのである。)
 まぁとりあえず、“クロージュ”に着いたのだ。

「わぁ、やっとついたっ!」
 嬉しさを抑えきれず、思わずはしゃいでしまった。
 シリアの冷たい視線が痛い…。
「ウィンド、お疲れ様!」
 アルマがウィンドにお礼を言うと、
「クァァッ。」
という声でウィンドがそれに応えた。
「じゃあ、この辺の森で友達作って遊んでおいで。」
「クァァッ!」
 するとウィンドは森の奥へと飛んでいった。
 さすが飛翔鳥、もう姿の欠けらもない。
「じゃあ、クラウドの城に向かおう。」
 私がみんなに催促する。
「うん!」
 アルマは張り切りながら、そしてシリアは少し怒った表情で言った。

 私達の着いた場所は、“クロージュ”を囲む“鳥の楽園”と呼ばれる森の中だった。
 ちょうどクラウドのすむ城も見えるところだった。
 そして、美しい夕焼けも望める。

 クラウドの誕生日パーティは日の沈む刻に行われる。
 今はまだ橙の日の刻
 時間が余ったので、私達は森を出て、近くの商店街をうろちょろした。