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~8.母の言葉~
「母さん、なんでここに!」
彼女がここに来ることは彼にとって予想外の展開だった様だ。
あわてふためく“月の陰”。
「ザーク……」
悲しそうな表情をして、キャロたちのお母さんが“月の陰”を見つめながら言う。
「恋愛は許されます。でも、喜びと同時に悲劇をもたらします……」
「だから、だめなのよ、ザーク。……悲しむのは嫌よ。ザークのためにも……」
「クレイル……」
お互いに見つめ合う二人。
「でも……ッ……それでも、クレイルが好きなんだ!戻ってこいよ!二人でまた一緒に仕事しよう?」
「……ザークといるのが、一番辛いの……結ばれることの許されない人と一緒にいるのは……好きなのに結ばれないのが……ッ……」
二人の様子を見ながら、二人の母が言った。
「全能の精霊、ユピテル様、どうか二人の恋が成立するのをお許しください……」
必死に願う彼女の瞳からは、幾筋の涙が零(こぼ)れていた。
オレも一緒になって願ってみる。
……あれ?
窓から白い兎が、葉っぱを持って和室に入り込んできた。
そしてその兎はふよふよと浮きながら、葉っぱをキャロたちのお母さんに渡した。
「『100年後に汝の子は生まれ変わり、結ばれることとなる』……ありがとうございます……」
二人のお母さんが嬉しそうに言う。
……100年ってめちゃくちゃ長いじゃねぇか……。
「私たちにとっての100年は、あなたたちにとっての1年……なのよ。」
キャロが微笑みながら言う。
そっか、精霊だもんな……オレらとは違うんだ。
「……私、ちゃんと戻るね。翔とお別れになってしまうけど……」
微笑みが消えていた。
そうだな、いつまでもオレのサックスの中に居座ってるわけにはいかないし。
「わーい、クレイルが戻ってくる♪んじゃゆきとかいうやつも返すよ。」
嬉しそうにザークが言う。
……でもキャロが居なくなると寂しくなるな。
「見えなくても、きっと近くにいるよ。」
そう言って、キャロたちはすぅ……っと、消えていった。
さよならは言わない。
「かける~!」
そう言って誰かがオレの首に背後から抱きついてきた。
「!?」
ゆきが、帰ってきた。
「ずっと暗闇の中にいて怖かったよ。ときどき外の声が聞こえてきたりしたけど……寂しかったよぅ。」
ゆきがオレから腕を離しながら言う。
「……二人も、“運命の時計”を持っているのね。」
しみじみと、ゆき。
「あぁ、もちろんオレたちもな。」
「うん。好きだよ。……昨日からずっと、この言葉をかけるに伝えたかったの。」
あまりにも唐突な言葉に、オレは驚いて倒れてしまった。
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